戦前戦中の日本映画界を代表する卓抜したシナリオ作家、映画監督伊丹万作。「無法松の一生」「赤西蛎太」「国士無双」などの作品で知られるが、彼はまた、映画論や社会評論にも絶妙な筆をふるった批評の名手でもあった。数々の演技論・映画論は、現在でも映画芸術のバイブルとされ、なかでも「演技指導論草案」は今なお高い評価を得ている。映画関係者のみならず、広くファン必読の書といえよう。その批評は、知的な諷刺のきいたユーモアにあふれ、透徹した観察によって人間性の本質をしかと把握。近年、絶えて久しい、剛直で骨っぽい珠玉の人生哲学を展開する。