2019年度中学入試最多出題作!栄光学園、海城、鎌倉女学院、成城、淑徳与野、桐朋、白陵、緑が丘女子、山脇学園、早稲田実業・・・・・・。中二の九月に、マレーシアからの帰国子女になった沙弥は、日本の中学に順応しようと四苦八苦。ある日、沙弥は延滞本の督促をしてまわる三年の「督促女王」に呼び出されて「今からギンコウついてきて」と言われ、まさか銀行強盗?と沙弥は驚くがそれは短歌の吟行のことだった。短歌など詠んだことのない沙弥は戸惑う。しかし、でたらめにマレーシア語を織り交ぜた短歌を詠んでみると……。2017年講談社児童文学新人賞受賞作!
ごはんからココナッツのにおいがしない。
「さーや、何やってるの」
わたしが給食のクリーム色の器に鼻を近づけてひくつかせていると、朋香ちゃんは新種の生きものを見つけたみたいに、好奇心と不安の混ざった声できいてきた。
「え、何でもないよ! コシヒカリかなーとか思って」
新種の生きものなんかになりたくないわたしは、あわてて器から顔を離した。
やばいやばい。
わたしは周りの給食班をキョロキョロと見まわした。
「マレーシアではココナッツミルクで炊いたごはんがあってね」なんて話し始めたら……。
きっと「帰国子女ぶってる」とか、周りにコソコソ言われちゃうんだろうから。
帰国子女として転入してきて二週間。まだまだ気が抜けない。
──本文より
目次
1(サトゥ) 督促女王
2(ドゥア) 初めての歌
3(ティガ) わたしは変わってしまったの?
4(ンパッ) 赤い下着
5(リマ) タンカードNo.1
6(ンナム) トナカイからのプレゼント
7(トゥジュ) 時計と寿司は回り続ける