音楽形式とは何か。ソナタ形式とは何か。当時の人々にどう理解されていたか。――本書は19世紀に「ソナタ形式」と呼ばれるようになった西洋近代で最も重要な音楽形式について、18~19世紀の理論や美学的記述を再読することによって、当時の基本的教養であった修辞学の観点から再考し、それが現代における古典派音楽の理解にどう寄与するかを問う。
「修辞学(対象や考え、あるいは情緒を聴き手にとって説得力のあるものにする技術)はこの時期のあらゆる芸術に枠組みを提供しており、音楽との対応関係はとりわけ密接なものでした。(中略)楽想が導入され、労作され、強化される順序は、弁論の構造と明確に対応していました。18~初期19世紀の作曲家たちや理論家たちはこのことを認識し、この考え方について詳細に説明し、音楽の諸形式と雄弁術の諸形式との対応関係を主張したのです。(著者による「日本語版への緒言」より)