本書は『The Best Class You Never Taught(あなたがこれまでに教えたことのない最高の授業)』の全訳です。「最高の授業」には一つの形があります。それは、テキストの内容や「鍵となる問い」を探究する生徒の主体的な話し合いによって実現します。いま流行りの言い方をすれば、「主体的かつ対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」ということになるでしょう。そのような授業では、教師の役割は主役から観察者やコーチへと転換し、生徒たちは
クリティカルに思考し、
協働してさまざまなことを運び、
全員が完全に参加し、
理にかなった行動をし、
高い思考レベルの問いかけをし、そして答え、
自分の考えを、証拠をもって裏付けし、
* 自分たちのしたことを評価し、していることを修正・改善し続けます。
こんな夢のような授業を教師が実現できる極めてシンプルな方法があるのです! 本書ではそれを「Spider Web Discussion」と名づけています。邦訳では「スパイダー討論」としました。この名称は、討論に積極的に参加する生徒たちの様子を観察者(=教師)が記録した「クモの巣図」(図版参照)から来ています。この討論によって、互いの学びを導きあい、サポートしあい、最終的には生徒たち自身の手で学びのコミュニティがつくり出されます。
スパイダー討論は、すべての教科と年代に使えることが証明されています。必要とされるのは、簡単な手順と達成目標と紙と鉛筆だけです。生徒たちは、スパイダー討論の実践を積むに従ってコミュニケーション・スキルが向上し、クラスメイトに対してより共感的になり、より良い問題解決者になり、自立した学び手になっていきます。これらのスキルはあらゆる職場でも求められているものですから、生徒たちの短期的なニーズだけでなく、長期的なニーズまで満たすことになります。本書では、このスパイダー討論を実践するための分かりやすい手順が詳しく紹介されています。(よしだ・しんいちろう)