「帰還する場所の不在、それも語りつくされました。だから"栖"をさがして旅をするのです」建築家が住宅を設計するということ。それをつきつめていくと、みずからの"終の栖"に至らざるをえないのだが、それは自己撞着的な不可能な行為だと、著者はいう。そこから見ると、世界の住宅建築のマスターピースと目されているものとはまったく別のリストが浮かびあがってきた。思いがけない特異で軽妙な書簡体によってはじめて明かされる、住まいの真実の姿。磯崎新が、住まい学大系第100巻の区切りに贈る書き下ろしエッセイ。