本書は、経済学方法論という共通のテーマについて、経済学史のさまざまな時代の専門研究者がそれぞれの立場から課題に取り組んだ書物である。現に行われている実質的な経済学の基礎には何らかの方法論があるはずであるが、それは必ずしも明白ではなく、また著者本人も自覚しているわけではない。多くの場合に暗黙のうちに前提とされている方法論を解明すること、本書はまずもってこの課題に取り組んでいる。本書の各部は「哲学的」「自然科学的」「社会的」「実践的」という各次元で構成されているが、この分類は、経済学方法論の諸問題を整序するうえで、一つの有効な提案となるであろう。本書の執筆者が集う研究グループ「経済学方法論フォーラム」は2006年に立ち上げられ、その後10年以上にわたって継続して共同研究に携わっている。各論文は、それぞれ独立したものであると同時に、討論によって磨かれた成果でもある。