• 著者阿久津隆
  • 出版社NUMABOOKS
  • ISBN9784909242020
  • 発行2018年6月

読書の日記

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本を読む人と、その生活。
このような365日の記録が、かつてあっただろうか。
東京・初台の〈本の読める店〉「fuzkue」店主、
初の単著のして読書の喜びに満ちた圧巻の1100ページ。
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◇推薦のことば
すべての文章に当てはまるわけではないが、この人の文章はまさに、文は人なり、才
気煥発、多動症的バイタリティーを存分に現していて、「ぜひ会いたい!」とも思う
し、「会わなくてここにある文章でじゅうぶん」とも思う。
こういう高い能力を持った人は、世間では成功すると思われがちだが、その高さの質
が世間と折り合わないために、「労多くして益少なし」というか、端からはわざわざ
見返りが少ないことばかり選んでいるように映る。
私はこの人に似た人を二人知っている、一人はアルチュール・ランボーで、もう一人
は樫村晴香という70年代からの私の友人だ。
二人とも浅い知り合いは、「もっとうまくやればいいのに(あいつにそれができない
わけないんだから)…」と残念がるだろうが、よく知る友人は、これが彼の精一杯の社
会との接触であり、彼にその気がなかったら自分は彼と交遊することがなかったと、
年とともに感じるようになる。
凡庸な人には彼の能力も魅力も、アフリカの砂漠での後半生が見えず、ただ天才詩人
としか思われず文学青年(死語)の崇拝の対象でしかない、そういう、ランボーのアフ
リカでの日々を思わせる、これはそういう文章で、私の気持ちを掻き立てずにはいな
い。
――保坂和志(小説家)
ここに収録された日記よりずっと以前の日付のものだっただろうか、阿久津隆は「ス
トラグルという言葉が好きだ」というようなことをたしか書いていた。ぼくは「スト
ラグル」という語感をすぐに気に入り、真似して使ってみようと考えたことを覚えて
いる。彼の日記をだらだらと読み進めているとふとした語彙がとてもフレッシュにみ
えることがある。
去年秋にようやく映画『オデッセイ』を観て、続けてすぐに原作『火星の人』を読ん
だ。火星に一人取り残された植物学者マーク・ワトニーが生存の証拠として書き続け
た日記。
火星にマーク・ワトニーがいて、そして初台に阿久津がいる。初台のマーク・ワト
ニーこと阿久津隆…

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