本書は、マスクの伝記ではない。
稀代の天才を生み出した「イーロン・マスクの時代」全体を読み解くものだ。
地球の温暖化防止と火星への移住法の確保という人類規模の壮大な目標を掲げるその個性は
現代の起業家の中でも突出している。
ベンチャーとしては極度にリスクの高い重厚長大産業に死に物狂いで挑み、
米国のものづくりを復活させつつある。
「マスク・エフェクト」は単に自動車や宇宙産業の中にとどまらず、
広く交通、エネルギーのインフラ、都市開発全体、さらには政治にまで及ぶ。
本書はマスク本人の素顔から、その影響までを幅広く描く。
マスク本人についての書籍は、すでに何冊か出ている。
しかし、シリコンバレーの空気感や時代背景、マスクのインパクトまで分析した本はまだない。
「日経の現地特派員」ならではの視座にもとづいた力作だ。