詩人と絵本作家による唯一の合作小説復活!
元版は1995年に刊行されたが、二人の離婚によってあっという間に絶版、幻の作品になっていた。「釘」「安心してここにいる」「トンチャンノオハカ」の三短篇を収め、巻頭に谷川の詩「夏が来た」を収録。新たに谷川による〈あとがきエッセー〉を付して、新装版として刊行。
巻頭の「釘」は、北軽井沢を舞台にしたひと夏の物語――少女の日記を佐野が、避暑地に滞在する初老の学者の日記を谷川が、二つの日記体小説が交互に描かれる。作品中にカラーの挿絵(佐野の作品)を7点収録。次の「安心してここにいる」は、少女と母親(父はいない)の章を佐野が、自殺志願の男の章は谷川が担当(カラーの挿絵2点、モノクロを3点収録)。最後の「トンチャンノオハカ」は、娘と二人暮しの母の視点で佐野が、時空を超えた死者の視点で谷川が描く(モノクロの挿絵5点収録)。
二人による合作小説はこの一作だけである。奔放な佐野作品と知的な谷川作品が協奏する珠玉の傑作に、美しい挿絵を織り込んだ、宝物のような作品集。