今、社会には、子育てストレス、介護負担、貧困、地域活性化、気候変動、国際紛争など本当にさまざまな問題があります。そして、その問題に対して、長い年月の間、多くの人々が取り組んで来ましたが、未だに多くが解決していません。これらは一つの原因や理由だけ起きているわけではなく、複数の要因が相互に影響しあって生じた「複雑な問題」です。こうした問題は、これまでのように問題を要素に分解したり、原因を取り除くようなシンプルなアプローチではうまく解決できません。複数の解決策が相互作用しながら問題に対応できる状況をつくる、言い換えるなら「問題に対応できる社会システム」を生み出す必要があります。では「問題に対応できる社会システム」をつくるためにはどうしたらよいのでしょう?
本書では、そのための方法として、多くの人と組織がつながるソーシャル・プロジェクトを紹介しています。著者らはこれまで環境問題や福祉、地域づくり、国際協力などの社会問題をさまざまな地域、立場でかかわってきました。そこでの具体的な経験と知識をもとに、ソーシャル・プロジェクトを現場で使いこなし、成功に導くために必要な考え方と進め方をまとめました。
SDGs(世界を変えるための17の目標)が注目されている今、一人ひとりの個人、すべての組織が、変革の担い手であることを求められる時代になりました。本書は、これからソーシャル・プロジェクトを始めようと考えている人にも、すで取り組んでいる人にも、そして壁にぶつかり悩んでいる人にも、ぜひ手にとっていただきたい1冊です。
本書の第Ⅰ部ではソーシャル・プロジェクトに取り組む前提をまとめています。
第1 章では、2020 年代、SDGs が広がる世界でのソーシャル・プロジェクトの基本的な考え方を、第2 章では、問題解決の意味が、単純な問題から” 複雑な問題” に変わることで、どう変わっていくのかまとめました。第3 章では、コレクティブな協働を行うための協働の進め方(協働ガバナンス)のポイントを整理しています。
第Ⅱ部では、ソーシャル・プロジェクトの進め方を12 のステップに分けてまとめました。各ステップで、ぶつかりやすい壁を乗り越えるために、どのように考え方や動き方をシフトするかをまとめています。ソーシャル・プロジェクトの課題や難しさは、事前に勉強したり考えたりしている時よりも、実際に動いて経験してみて初めて気付くものが多いのです。そこで、ソーシャル・プロジェクトの実践の現場で困った時に参照しやすいように、ステップごとに使える概念や手法をコンパクトにまとめています。