「ぞんざいな言い方をすれば、インタビューは逃れることのできない社会的なゲームの一部を成しているのであり、あるいはもっと真剣な言い方をすれば、一方では作家と、他方ではメディアとの間の、知的な作業における連帯の一部を成しているのです。受け入れなければならない連鎖があるのです。書いた瞬間から、それは最終的には出版されるためであり、そして出版した瞬間から、社会が本に要求するもの、社会が本から作り出すものを受け入れなければならないのです。」
『零度のエクリチュール』で登場してから10年のうちに、『ミシュレ』『ラシーヌ論』『現代社会の神話』を出版したバルトは未来の記号学をつくろうと、ソシュールの言語学から学んだ「記号」の概念を鮮やかな手つきで用いるようになっていた。メディアはこぞって、この批評家に知見をもとめ、挑みかかり、食い下がる。それからも、『モードの体系』『S/Z』、そして転機となった『記号の国』……。新著が出るたびにバルトは問われつづける。「あなたはどこへ向かっているのか?」
『恋愛のディスクール・断章』『明るい部屋』にいたる自著についてのみならず、映画と文学について、快楽と恋愛について、知識人と社会について、真理と欲望について、あらゆる質問にたいして率直に、礼儀ただしく、軽やかに答えるバルトの声を転写した38本のインタビューを、この一巻に集成する。