学齢期の子どもたちは、家庭と学校を居場所としながら育っていく。家庭は個々に応じて様々であり等しく与えられるものではないが、義務教育はどの子も等しく享受できるのだろうか。 家庭に替わる施設で暮らす子どもたちは、生活よりもむしろ教育の面で不遇を託つ歴史を経験してきた。仙台基督教育児院史を紐解くと、施設が、独自には護れない学校教育を苦心して子どもたちに保障し、かつ更なる教育を生活の希望として積極的に取り込もうとした事実に驚かされる。施設資料を丹念に掘り起こし、関係者の聞取りも手がかりとして施設における教育の営みに光をあてた本書は、子どもの生活にとって学校がもつ意味を鮮やかに浮かび上がらせている。