絵本画家・瀬川康男、初の本格的画集
ミリオンセラーを含む数々の絵本や、タブローで美を追究した絵本画家・瀬川康男。昨年、77歳で亡くなった画家の壮大な画業に迫ります。
・解説/広松由希子さんからのメッセージ
二転三転山あり谷ありの画集作りでしたが、これこそ「苦行僧」と呼ばれた瀬川さんの画集にふさわしいかも……とだんだん思えてきました。大きな、希有な画家でした。そのとらえきれない仕事のうち、今回ご紹介できるのはほんの一部。それでも、絵と絵本の世界に「真剣に遊んだ」瀬川さんの仕事に、驚いていただけると思います。
・担当編集者のうちあけ話
幼児向けの絵本『いないいないばあ』などの作品で知られる瀬川康男さん。古今東西の美術を吸収しながら、新しい技法に次々挑み、独自の荘厳な世界を表現してきました。瀬川さんの描く自然や、生きものたちの豊かな表情に、心なごんだ方も多いのではないでしょうか。その瀬川さんが、2010年2月に他界。ほんとうに残念でなりません。
今回、初の画集をまとめることになりましたが、進行中、いちばんに感じたことは、原画の美しさと作家の魂の崇高さでした。変わりゆく時代のなかでも、生涯描き続けた作品は、色あせることなく私たちを包み、本当にたいせつなものはなにか? と静かに問いかけているように感じられました。
ご本人がいらっしゃらないなかでの画集制作はわからないことが多く、右往左往する毎日でしたが、高校時代からの友人であり、共に本づくりもした装丁家の辻村益朗さん、瀬川さんの作品に惚れ込み、長年研究してきた絵本家の広松由希子さん、瀬川さん自身にインタビューし、画法を究明してきた美術館学芸員の松本育子さん、作品の撮影に協力してくださったご遺族、ほか多くの方のお力により、形にすることができました。なかには様々な理由で掲載が叶わなかった作品があり、少し残念な部分もありますが、瀬川さんの新たな魅力を発見していただける画集になったと思います。ぜひ、お楽しみください。(編集I)