2019年1月に公開の映画『あの日のオルガン』の原作本。太平洋戦争末期、東京都品川区、京浜工業地帯のすぐそばにある戸越保育所では、日に日に空襲が激しくなり、園児たちは命の危険にさらされていた。そんな中、まだ20代の若い保育士たちが、これまで例のなかった未就学児の集団疎開を決意する。同じ東京の、愛育隣保館と合同で行われることになった集団疎開。国中が食糧難のなか、やっと見つかった受け入れ先は、埼玉県蓮田市の無人寺、妙楽寺だった。ここで、保育士11人、園児53人の「疎開保育園」がはじまった。さみしがる子供たちのケア、深刻な食糧不足、東京大空襲で孤児になってしまった園児。やがて空襲は、疎開保育園のある埼玉にも頻繁にやってくるようになり、「私たちのやっていることは、正しいのだろうか。戦争が、終わることはあるのだろうか……?」と、若い保育士たちは、迷いを持ち始める。これまで知られてこなかった「疎開保育園」という存在にスポットをあて、戦争が子供たちを巻き込んでいく様子を、関係者たちへの丹念な取材に基づいて克明に描くノンフィクション。