65歳の定年退職者ハロルド・フライは、癌で死にゆく友人に、ただお見舞いとありがとうを伝えるために1000キロの道を手ぶらで歩き始めた。本当は手紙を出すつもりだったのに、実際に会って伝えるべきだと思って……。 道中の心温まる感動的エピソードの数々、すっかり蓋をしてもう触れることのないハロルドの悲しい秘密……。 胸を打つ長編小説!
定年退職した65歳の男が、20年前に同僚だった女性のお見舞いをしたくて、ただただありがとうを伝えたくて、1000キロの道を歩き始める。
去来する人生の苦い記憶と“秘密”を踏み越えながら。
そして巡礼の最後に訪れる、深く静かな感動の救済――
ナショナル・ブック・アワード新人賞受賞作
世界36ヵ国が涙したロードノベル!
自分はいまこの目に映るものの外側にいると同時に内側にもいる、この目に映るものとつながっていると同時にそういうものを突き抜けようとしている。
歩くとは、じつはそういうことなのだ。(中略)
携帯電話などなくてもかまうものか。あらかじめルートを考えなかったから、あるいは道路地図を買わなかったからといって、それがどうした。
自分には別の地図がある。頭の中にある地図が。
これまでに通ってきたすべての場所、これまでに出会ったすべての人からなる地図が。(本文より)
(原題)
THE UNLIKELY PILGRIMAGE OF HAROLD FRY