夜をください そうでなければ永遠に冷たい洗濯物をください
短歌はわたしではなく世界を震わせるのか。 この歌集を読んで、初めてそう思った。 世界が震え、震える世界の中にいるわたしが共鳴する。 そうか、そうだったんだ。 ――金原瑞人
【五首選】
わたくしが復讐と呼ぶきらめきが通り雨くぐり抜けて翡翠(かわせみ)
灯のもとにひらく昼顔おなじ歌を恍惚としてまた繰りかえす
水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水
つばさの端のかすめるような口づけが冬の私を名づけて去った
神を信じずましてあなたを信じずにいくらでも雪を殺せる右手