◆2018年にOxford University Pressから刊行されたMARKETCRAFT――How Governments Make Markets Workの翻訳。
◆これまで、経済において「自由市場」と「規制」は対立するものと考えられてきたが、現実には規制のない市場はなく、市場は多くの規制によってデザインされたものである。
◆本書では、マーケットデザインを幅広い意味でとらえ、以下のような考え方によって、市場をデザインすべきだと解く。
1 欠点のない自由市場というものは存在しない。
2 市場はデザインしなければならない。
3 市場改革は障害を撤廃することによってではなく、市場のインフラを創造することによって推進される。
4 市場原理に適った政策が唯一の正解であると考えてはならない。
5 そもそも市場を有効に活性化する政策は何か、はっきりしないことも多い。
6 政府と市場を対置させる経済政策の考え方は基本的な誤解に基づいている。
7 規制と競争を対置させる議論も、根本的な誤解を生じさせている。
8 アメリカのような自由主義的市場経済の国も、日本のような協調的市場経済の国と同程度かそれ以上に規制されている。
9 日本のように協調的な市場経済を持つ国がマーケットを自由化するためには、むしろより多くの規制を必要とする。
10デジタル時代においては、より強力な市場のガバナンスが必要になる。
◆上記のような視点に立ち、コーポレートガバナンス、企業の財務会計、知財、労働法など分野のマーケットデザインを日米比較しながら分析。官民連携、協力的な労使関係、高い教育および職業訓練水準、社会の安定、特定の領域における技術的卓越性といった日本独自の制度的強みを基盤とした、市場の再デザインの必要性を提言する。