姪の結婚披露宴に、少年時代の親友が闖入してきた。落魄した友は、三十四年前の秋、殺人罪で絞首刑になった父親の無実を訴え、翌朝首を吊って自殺をする。罪悪感に突き動かされたわたしは、疎遠にしていた人々を訪ねる過去への旅に出たが…。錯綜する物語は、失われたものへの愛惜と激しい悔恨を湛え、万華鏡さながらに変転してゆく。余韻深い結末が待ち受ける、円熟の逸品。