明の嘉靖二十七年、寧台の村落を焚掠した倭寇は官軍と対峙すると、得意の戦法『胡蝶の陣』をもって戦ったという。父母を殺され一夜にして孤児となった小地主の伜・陳可願の目に指揮者が揮う白い扇が焼きついた。復讐を誓う陳可願の積怨はやがて、倭寇対策に手を焼く総督胡宗憲にある謀略を献策して成功する。が意外な事実が晩年に判明して…。表題作ほか悠久の歴史の壁に埋もれた人間ドラマを描く珠玉集。