〈乳児は満足を示すためにだけではなく、周囲の人たちの微笑みに応えるためにも笑い、微笑みます。このことはすでにある種の対人関係を前提にしています。言語活動に先行して対人関係がとり結ばれ、その文脈のなかで言語活動が現れてくるのです。…幼児を言語活動の方へ向かわせるのは、まわりの人たちとの関係です。それは、外から規定された目標へ向かう発達なのであり、生体の内部にあらかじめ仕組まれている目標へ向かう発達ではありません〉(「心理学的に見た幼児の言語の発達」)
〈自己の身体の意識と、他人知覚とのあいだには、対応関係があります。自分が身体をもっているということを意識することと、他人の身体が自分のとは別の心理作用によって生気づけられていると意識することとは、論理的に言って対称的な二つの操作であるばかりか、現実に一つの系をなしている操作なのです〉(「幼児の対人関係」)
1949年から1951年にかけてメルロ=ポンティがソルボンヌ大学の児童心理学と教育学の講座で行なった一連の講義の要録、およびそれに関連するテクスト4編を収録。