『ジーノの家 イタリア10景』で日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞した内田洋子さんの著作。
イタリア半島じゅうを回り、まだ知られていないこの地の暮らしを見つけてみんなに伝えていきたい――そう思いながら住みつづけて集めた〈イタリアの足元〉13の話。
仕事で海外を飛び回る妻と離別した主夫。
無職でひきこもりの息子と暮らす老母。
弟を想う働きものの姉3人。
表題作は、ミラノのバールで知り合った、いつも一人でスポーツ新聞を読んでいるくせ毛の少年・ロベルトの話。離婚した両親のあいだを行ったりきたり。実業家の父はロベルトを後継者と決め様々な課題を与えるが、休日を一緒に過ごしたりはしない。あるとき3番目の妻となる若い女性を連れてきて、彼女はやがて男の子を産む。一人息子でなくなったロベルトはようやく自由になり、一人アメリカに暮らすことを決意する。バールの店主のもとに届いた「ロベルトからの手紙」に同封してあったものとは……
さまざまな家族の形とほろ苦い人生を端正に描いた、大人の随筆集。
解説・平松洋子