16世紀にスペイン、ネーデルラント、ボヘミア、ハンガリーを含む「世界帝国」を実現したハプスブルク家は、ルドルフ二世(1576‐1612年)の時代をへて三十年戦争に突入し、歴史的衰勢へ向かう。イギリスの歴史家エヴァンズは、この激動の時代に着目し、従来、鬱病質でオカルトに入れあげた風変わりな君主とみられていた皇帝ルドルフと、そのプラハ宮廷の実像に迫り、宗教対立の複雑な政治史、ルネサンス以来脈々と続く普遍主義、その根底にある錬金術やヘルメス主義・オカルト思想の継承者たち、マニエリスム芸術家たちの知的交流を、膨大な資料で活写する。