われわれは猫たちと生活を分かちあっていながら、かれらのことを何も知らない。どこにでも姿を現す猫たちは、たしかにここにいたはずなのに、同時に別のところにもいる。いくつもの帰るべき場所をもつかのようなこの優雅な獣の眼差しは、われわれの侵入を拒みつづける。動物行動学、現象学、精神分析をひきつつ愛すべき猫たちのふるまいを見つめ、見知らぬ者とともに生きることを学ぶ哲学的断片。