国家の戦争犯罪が法廷で裁かれたのは、第二次世界大戦後の"ニュルンベルク裁判"と"東京裁判"が初めてである。それは勝者である連合国が創設した裁判所憲章に準拠し、従来の「通例の戦争犯罪」に加え、「平和に対する罪」と「人道に対する罪」という新しい法概念を含んでいた。「勝者の裁き」の場に引き出されながらも、冷静な眼差しで対処した「A級戦犯」重光葵の起訴から判決までの軌跡を、精緻な読みで分析し、東京裁判の実像に迫る。