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  • 著者熊川哲也
  • 出版社講談社
  • ISBN9784065125458
  • 発行2019年5月

完璧という領域

熊川哲也、21年ぶりの自伝
「2007年、熊川は故郷・札幌での公演「海賊」で着地に失敗し膝に大けがをする。Kバレエはスター熊川に支えられてきたカンパニー。天才的な経営者であっても、お先真っ暗になって当然。当時の写真が掲載されているが熊川の内面を端的に示していて胸が痛む。だが、熊川はその負傷さえも成長の契機にして、一回りも二回りも大きい存在になってゆくのである。人生経験がバレエの振付演出生かされてゆく経緯が感動的だ。
しかし最大の感動は、その成長の原動力がじつは「僕は好きな音楽を聴くと、それだけで涙が出そうになる」という感受性に潜むことが明かされてゆく過程にある。熊川の強さは涙と無縁に思えるが、そうではない。涙は隠すべきもの、堪えるべきものだが、それなくして美はありえない。熊川の秘密だが、確かに全編に音楽が鳴り響いている。名著である」
――三浦雅士氏「毎日新聞2019年6月2日」書評「天才は涙もろい 感動こそ経営の原動力」より抜粋
Kバレエカンパニー旗揚げ、古典全幕作品上演、バレエスクール主宰、日本発オリジナル作品創造、オーチャードホール芸術監督、そしてさらなる新たな創造。前人未踏の軌跡が今、本人の手で明かされる――。
その男の登場に、コヴェントガーデンは熱狂した。喝采は日本に引き継がれ、男が巻き起こす旋風は一つ一つが事件になった。芸術としてのバレエだけでなく、ビジネスとしてのバレエを成功に導くために、大企業と渡りあい、劇場を運営し、ダンサーとスタッフを育てる。世界に輸出するために、完全オリジナル作品を創造し続ける。そのようなことが、たった一人のバレエダンサーに可能だと、誰が想像できただろうか?
「完璧など存在しない」と人は言う。だがそれは失敗から目をそらしたり夢をあきらめたりするための言い訳にすぎない。たしかに作品を「完璧という領域」にまで到達させるには、ダンサーの心技体だけではなく、オーケストラやスタッフ、観客、劇場を含むすべてが最高の次元で調和しなければならない。それは奇跡のようなことかもしれない。しかし「完璧という領域」はたしかに存在する。偉大な芸術はすべてそこで脈打っている。僕はつねにその領域を志向してバレエに関わってきた。――「はじめに」より抜粋
第一章 Kバレエカンパニー始動
第二章 母なる『白鳥の湖』
第三章 ダンサーの身体
第四章 試練のとき
第五章 いにしえとの交感
第六章 舞台の創造
第七章 才能を育てる
第八章 カンパニーとともに
第九章 見えない世界

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