漱石の作品は、かなりヘンテコリンで面白い。『こころ』は男同士の恋愛を軸に展開する話とも読めるし、『文鳥・夢十夜』では文鳥を眺めて美しい女の影を夢想しながら、実生活では奥さんの尻に敷かれがちな漱石の姿が見えてきます。それは普通の人間の、百年経っても色褪せない日々の姿です。