ファシズムと群衆の関係を論じて、ドイツの思想界に一石を投じたエリアス・カネッティの『大衆の力』から四十年が経った。ポスト・モダンのIT社会において、近代市民社会の主権者であった「大衆」はどこに向かっているのか?一昨年『人間界の規則』でドイツに一大論争を引き起こしたスローターダイクが、ホッブス、スピノザ、ニーチェ、ハイデッガーを結ぶ「主体性」論の系譜から、影の近代史としての「大衆」の歴史を再構成していく。