鴎外、漱石をはじめ本郷に住んだ文人たちや伯父佐々醒雪、父母のこと、個人的な体験など、本郷を中軸に据え、そこにかかわる様々を語りながら、時代を生き生きと甦らせ、半生を映し出して行く。私が本郷を所有するのか、本郷が私を組み込むのか本郷に染着する文化を見事に描ききる『夕鶴』の作者の限りなき本郷愛着の記。