カント『永遠平和のために』が日本国内では、2010年以降の憲法改定、安保法の解釈などの政治環境の変化の中で話題を集め、新訳書籍が復刊するなど静かな話題を集めている。本企画では、カント研究者でありながら市民参加の哲学カフェを主宰するなど、生活の中の哲学の実践を追及する寺田俊郎が『永遠平和のために』は、簡便な小論というだけではなく、実はカント哲学全体の思想を反映しながら、それを簡潔に表示する「見本」と捉えて読み直していく。もうひとつの本企画の目的は、激動する世界情勢の中での哲学の可能性を考えるという試みだ。著者は、カント哲学を「世界市民の哲学」として読み直し、その思考方法もとに「戦争をなくすことができるのか」というリアルな問題を考えていく。国際連盟、国際連合などの戦後の政治体制の持つ意味、カント思想をふまえた上での日本国憲法の意義、現代の世界的な政治秩序の混乱などを徹底的に考え抜くことで小論『永遠平和のために』の持つ現代的意味を問い直していく。