終戦から復興を遂げつつある古書の街・神田神保町の一隅で、ひとりの古書店主が人知れずこの世を去った。古書の山に圧し潰される皮肉な最期を遂げた商売敵を悼み、同じく古書店を営む琴岡庄治は後処理を申し出るが、彼の周囲では次第に奇妙な出来事が起こり始める。行方を眩ませる被害者の妻、注文帳に残された謎の名前、暗躍するGHQ――名もなき古書店主の死を巡る探偵行は、やがて戦後最大級の“計画”を炙りだす。直木賞受賞作家の真骨頂と言うべきミステリ長編。