「短歌ニューウェーブ」から三十年。原点に回帰し、区切りをつけ、あらたな地平に踏み出す。第11歌集。ーー今度は普通の歌集を作ろうと思ったーー
(収録歌)
波のうまれるところを想う混乱のひかりが俺を生かし続けて
アトミックボム、ごめんなさいとアメリカの少年が言うほほえみながら
ただひとり俺によく似た死者の待つプラットホームあり細長いプラットホーム
どこにでも今があるってたのしいぞジンジャーエールを飲みほす感じ
かもしれないドアの向こうに人がいるかもしれなくてすごく光った
文字は言葉に背いて紙の家に棲むあなたのむねのようなくらがり
火はひとり炎はふたりふりしきる花びらをてのひらにあつめて
そのほか55歳から59歳までに創作した476首を収録。