君主たちは競って宮廷に招き、司教たちは恐れ、
医師たちは憎み、女たちは憧れた「最後の魔術師」カリオストロ伯爵――。
シチリア島のごろつきだった男は、いかにして王侯貴族を手玉にとり、
フランス革命前夜のヨーロッパ社交界にその名を轟かせるにいたったのか。
錬金術師、医師、預言者、詐欺師、フリーメイソン会員といくつもの顔を使い分け、
〈理性と啓蒙の時代〉の18世紀を妖しく彩った男の生涯を追う。
<目次より>
プロローグ バルサモの家
1 フリーメイソン
したたかすぎる巡礼者
「カリオストロ伯爵」誕生
フリーメイソン入会
異端審問所のスパイ
カザノヴァの打算
2 降霊術師
森に眠る財宝
兄と妹の関係
サンクトペテルブルグへ
3 シャーマン
エカテリーナ女帝の怒り
女帝主治医の挑戦
ロシア「追放」ポーランドでのつかのまの栄光
王政打倒文書への署名
4 コプト
「ダイヤの首飾り事件」の裏側で
「追放された王女」の執念
略奪者たちの思惑
マリー=アントワネットの評判
勝利者なき判決
5 預言者
悪徳ジャーナリスト「ドブのルソー」
『フランス人へのカリオストロ伯爵の手紙』
狂言者との同盟
悪評コレクション
「彼は死んだ」
6 回春剤
押し寄せる敵意
孤立する魔術師
カトリック教会への接近
セラフィーナの裏切り
終身刑判決
7 異端
サン・レオ要塞の囚人
カリオストロ奪回作戦
獄中の予言
異端者の死
エピローグ 不死