悲しい曲で人は悲しくはならない――
心の哲学を利用した美学の観点から、「音」とは何か、「聴取」とは何なのかを考察する。
美しい音楽を聴いたとき人は感動を覚える。このような美的経験は日常にあふれているが、美しい/美しくないという判断にはどのような基準があるのだろうか。そしてどれほどの客観性があるのだろうか。
本書では、美に関する経験や判断の問題を扱う美学に、心の哲学を利用してアプローチする。とりわけ「音楽聴取」に焦点をあわせ、美的判断の客観主義を擁護する立場をとりつつ、音とは何か、なぜ人は悲しい音楽を聴くのか、音楽と情動はどのように結びついているのか、などさまざまなトピックについて論じていく。