人はなぜ宇宙へ行くのか。
立花隆『宇宙からの帰還』が出版されて30年以上が経つ。同書で紹介された宇宙飛行士たちの「神秘体験」「宗教的体験」は、当時も今も大きなインパクトを読者に与えている。同書により、宇宙というのは特別な場所であり、そこに行くことは人知を超えた体験をもたらすのだというイメージを我々が共有することになったと言えるだろう。宇宙飛行士の野口聡一氏も高校生の時にこの本に感銘を受けたことが、宇宙飛行士を目指した動機の一つだと語っている。
本書は、歴代の日本人宇宙飛行士全12人に取材を行った史上初の書籍となる。宇宙に行った彼らがどのようなことを感じ、考えたか。問いかけの下敷きになっているのは立花隆の前掲書であり、「神秘体験」の有無、地球がどのように見えたかなど、実存的、哲学的な領域を中心としている。
日本人宇宙飛行士も“神”を感じたのか? 彼らが自らの体験を振り返ったときの違いは、どのような点から生じているのだろうか?
〈本書のおもな内容〉
CHAPTER1 この宇宙で最も美しい夜明け――秋山豊寛の見た「危機に瀕する地球」
CHAPTER2 圧倒的な断絶――向井千秋の「重力文化圏」、金井宣茂と古川聡の「新世代」宇宙体験
CHAPTER3 地球は生きている――山崎直子と毛利衛が語る全地球という惑星観
CHAPTER4 地球上空400キロメートル――大西卓哉と「90分・地球一周の旅」
CHAPTER5 「国民国家」から「惑星地球」へ――油井亀美也が考える「人類が地球へ行く意味」
CHAPTER6 EVA:船外活動体験――星出彰彦と野口聡一の見た「底のない闇」
CHAPTER7 宇宙・生命・無限――土井隆雄の「有人宇宙学」
エピローグ 宇宙に四度行った男・若田光一かく語りき