ムーミン作家トーベ・ヤンソンは、じつは子供のこだわりと大人のユーモアやペーソスがない交ぜになった味わい深い小説やエッセイの作者でもある。多くの名作短篇のなかから、明るく楽しい作品を編んだ「トーベ・ヤンソン短篇集」に対し、本書はいわばそのダークサイド。シニカルでいて愛に溢れた独特の作品群は、気むずかしく気位が高い老人のよう。まさにヤンソンの本領が発揮された一冊。