• Author尾島正洋
  • Publisher文藝春秋
  • ISBN9784166612413
  • Publish Date2019年11月

総会屋とバブル

かつて「総会屋」と呼ばれる男たちがいた――。



彼らは闇社会の住人でありながら、上場企業の株主総会に株主として出席し、経営陣を震え上がらせた。壇上の経営陣にイチャモンまがいの質問を突きつけて締め上げる「野党総会屋」がいれば、怒号のようなヤジをとばして彼らの質問を妨げる「与党総会屋」もいた。企業側が、彼らに利益供与をすることと引き換えに、株主総会の円滑な進行を望むことは自然な流れでもあった。



21世紀となった現在では信じられないが、名だたる超一流企業が株式市場のハイエナたちに喰い付かれていた。キリンビール、伊勢丹、イトーヨーカドー、味の素……。

「企業をまわって集金すれば、月に3000万円。最盛期は年収が3億円をゆうに超えていた」と、日本最大の総会屋「論談同友会」の元幹部は言う。



バブル経済に踊っていた金融業界にいたっては、総会屋に喰らい尽くされていたと言ってよい。ガリバーの野村證券は総会屋を優遇し、損失補填を行っていた。第一勧業銀行は歴代トップが大物総会屋との関係を続け、違法に融資された額は300億円にものぼるという常軌を逸した沙汰だった。



なぜ一流企業の経営陣は、闇社会の“呪縛”に絡み取られてしまったのか? 論談同友会の元幹部らの証言をもとにバブルの裏面史を描き出す。



【目次】

第1章 総会屋の源流とバブル前夜

第2章 日本で一番長かった株主総会

第3章 狙われた流通業界

第4章 「社内総会屋」と呼ばれた男

第5章 損失補填スキャンダルと稲川会

第6章 野村証券の蹉跌と第一勧銀の呪縛

第7章 山一証券の崩壊と新井将敬の自殺

第8章 三菱グループの“汚れた原点”

終 章 消滅していく総会屋

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