• 著者廖惟宇 串山大
  • 出版社みすず書房
  • ISBN9784622088639
  • 発行2020年1月

ゲリラ建築 / 謝英俊、四川大地震の被災地で家を建てる

台湾の建築家・謝英俊は、1999年に台湾中部で発生した九・二一大地震をきっかけに、自然災害の被災地や貧しい農村地域をわたり歩き、現地住民と協力した家づくりを手がけている。台湾八・八水害、四川雅安地震、ネパール地震の被災地での復興建築によって知られる謝の仕事は、しばしば「慈善活動」として評価されがちだ。しかし実のところ、その目的は過度に産業化された現代の「住まい」のあり方を問い直し、産業としての建築を再定義することにある。本書は、2008年に中国四川省北部で発生した四川大地震の被災地での住宅再建に参加した台北出身の若者が、謝の実験的建築とその周辺をパノラマ的に描いた民族誌的ドキュメンタリーである。
謝英俊の建築の特徴は、現地住民が労働力を交換単価として互いの家を建てあう「協働セルフビルド」と呼ばれる手法にある。そこでの建築家の役割は、居住者が自分の家の設計・建設に参加できるような建築システムを構築することに徹底される。設計においては第一に家屋の構造的な安全性を保証し、現地の人々の生活文化や伝統を最大限に尊重して、インテリア等に活かす余地を残す。建設においては、専門技術を持たない人にも建てられるよう工法を簡易化し、現場で品質を監督する。こうした手法は被災直後の建築資材や労働力、資金の調達問題を解消すると同時に、人々が「住まう」ことの本質を再考する契機となる。
四川大地震被災地での住宅再建では、自力で家を建てる伝統を保つ少数民族と「協働セルフビルド」とが調和を見せる一方で、文化や政治・経済の違いに端を発する様々な困難にも直面する。その実際を率直な筆致で描き、理論と実践経験との両面から謝英俊の思想と方法に迫る。
阮慶岳(建築評論家)、陳界仁(現代芸術家)推薦。市川紘司解説。

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