「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」に始まる詠嘆口調の名調子と雄渾無双のスタイルで、今も人々の心を魅了する『平家物語』。それは浄土教信仰による終末論と無常観を背景に、源氏と平家の興亡を通して人の栄華のはかなさを描いたものとされている。しかしこの物語には、武家政権を王朝の秩序に組み入れるという、王権の側の隠された意図があった。「語り」から「文字」へのテクスト生成の現場を検証し、日本史と国文学の境界を超えた斬新な入門書。