記事紹介 ◆いわゆる特定C型肝炎被害者救済法の概要 民事法の観点から見た給付金支給制度についての解説/林 史高 ◆医療観察法施行後2年の処遇事件の処理状況について/下村義之・吉田大輔・坪井隆人 ◆心神喪失者等医療観察法施行後2年の現状と課題について/三好幹夫 ◆大阪地方裁判所における「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「医療観察法」という。)施行後の事件処理状況/並木正男・西田眞基 ■研究会「事実認定と立証活動」11 適正な事実認定をするための方策 情報の歪みと是正/馬橋隆紀・須藤典明・村田 渉・加藤新太郎(司会) ◆民事訴訟法10年 その成果と課題/山本和彦 ■関西家事事件研究会報告29 特別受益を考える 最二小決平16.10.29の影響/渡邊雅道 ■実践 刑事弁護:裁判員にわかりやすい弁護のために7 説得の心理学/藤田政博 ■世界の司法119——その実像を見つめて ドイツにおける公訴参加の実情/財賀理行 ■世界の司法120——その実像を見つめて 陪審の役割に対する信念と敬意 カナダにおける「陪審による法の無視」の理論を巡って/南 宏幸 判例紹介(全20件) ◆特 報 [行政法一般] 1いわゆる混合診療事件第一審判決(東京地裁平19.11.7判決) 1 健康保険法63条1項の「療養の給付」の意義 2 公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)として,被保険者は,健康保険法上,保険者に対し,インターフェロン療法(保険診療)に活性化自己リンパ球移入療法(自由診療)を併用する混合診療を受けた場合であっても,上記保険診療については,同法63条1項の「療養の給付」を受ける権利を有することを確認した事例 ◆最高裁判例 [行政法一般] 1(最高裁平19.12.13第一小法廷判決) 郵政事務官として採用された者が,禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11か月にわたり事実上勤務を継続した場合に,国(旧日本郵政公社,郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)において上記の者が国家公務員法76条,38条2号に基づき失職した旨を主張することが,信義則に反し権利の濫用に当たるということはできないとされた事例 [行政争訟法] 2(最高裁平19.12.18第三小法廷決定) 弁護士に対する業務停止3月の懲戒処分によって生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害が,行政事件訴訟法25条2項にいう「重大な損害」に当たるとされた事例 [地方自治法] 3(最高裁平20.1.18第二小法廷判決) 普通地方公共団体が,土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約に基づく義務の履行として,当該土地開発公社が取得した当該土地を買い取る売買契約を締結することが違法となる場合 [個別的労働関係] 4(最高裁平19.12.18第三小法廷判決) 学校法人の理事会が,人事院勧告に準拠して給与規程を改定し,教職員の月例給を引き下げることを決定した上,12月期の期末勤勉手当につき,改定後の給与規程に基づいて算定した額からその年の4月分から11月分までの給与の減額分を控除するなどの調整をしてその支給額を定めた場合において,上記調整をする旨の決定がその効力を否定されることはないとされた事例 [民事訴訟法] 5(最高裁平19.12.12第二小法廷決定) 1 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例 2 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして文書提出命令が申し立てられた場合に,刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例 6(最高裁平19.12.4第三小法廷決定) 訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し,かつ,その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合において,裁判所が同決定を民訴法84条の規定に従って取り消すことなく同決定を受けた者に対し猶予した費用の支払を命ずることの許否 ◆行政裁判例 [行政争訟法] 1(大阪地裁平19.8.10判決) 自動車等の運転に関し道路交通法若しくは同法に基づく命令の規定又は同法の規定に基づく処分に違反する行為で道路交通法施行令別表第二の一の表の上欄に掲げるものに対し,公安委員会が同法施行令別表第二に定めるところにより付した点数(累積点数)が一定以下であることの確認を求める利益が認められないとされた事例 [国家補償法] 2(東京高裁平18.4.26判決) 拘置所収監中に結核性頸部リンパ節炎を発症した刑事被告人に対する治療について医師の注意義務違反が認められた事例 [情報公開] 3(大阪地裁平19.8.30判決) 政治資金規正法改正(平成18年法律第113号)により収支報告書の要旨公表前には収支報告書の開示決定をしないと規定されたことが,原告らの憲法上の「知る権利」を侵害するとはいえないとされた事例 ◆労働裁判例 [個別的労働関係] 1(東京地裁平19.5.24判決) 長期にわたる海外出張中にうつ病を発症し,自殺したことにつき業務起因性が認められた事例 ◆民・商事裁判例 [民 法] 1(東京地裁平19.5.29判決) 統一協会の信者などによる献金等の勧誘行為について,宗教的行為であっても一定の場合不法行為となりうるとしたうえで,不法行為であると認定されたものについて統一協会に民法715条に基づく不法行為責任を認めた事例 2(名古屋地裁平19.4.26判決) ヘルペス脳炎を発症していた患者を診察した医師において,十分な問診・鑑別診断をしなかった過失があり,これによりヘルペス脳炎の発見が遅れたため患者に高次脳機能障害の後遺症が残ったとされた事例 3(東京地裁平19.12.3判決) 包括遺贈の遺言執行者等が法定相続人に対して相続財産目録を交付せず,事前に通知をしないまま遺産の不動産を処分したことなどが違法であるとして,法定相続人から遺言執行者等に対する損害賠償請求が認容された事例 [商 法] 4拓銀カブトデコム融資訴訟控訴審判決(札幌高裁平17.3.25判決) 銀行の建設会社に対する融資が回収不能となったことにつき担当取締役らの注意義務違反が一部につき認められ,残部につき否定された事例 5(東京地裁平19.9.26判決) 株式持合いの合意に基づいて,株式を売却した売主が,当該株式について上場廃止原因があることを買主に対して説明しなかったことが,条理上の説明義務に違反し,不法行為に当たるとし,買主の購入代金相当額が損害として認定された事例 6(福岡高裁平19.2.13判決) 1 火災保険金の請求に対して,放火ではないとして保険金の支払を命じた事例 2 火災保険の対象となる損害について個別に判断された事例 [知的財産] 7(知財高裁平19.8.8判決) 米国メージャーリーグベースボール(メジャーリーグ)所属の球団「シカゴ・カブス」のロゴと同一形状の商標(本願商標)と,「UBS」の欧文字をその構成中に含む引用商標とは称呼の点で類似しないとして,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決が取り消された事例 ◆刑事裁判例 [刑 法] 1(名古屋高裁平19.8.9判決) 不正なロムにすり替える意図でパチスロ遊技機の正規ロムを取り外して持ち去った行為について不法領得の意思が認められないとして,強盗致傷罪(事後強盗)の成立を否定した事例 2(大津地裁平20.1.17判決) 電車内の座席やトイレで乗客の女性を強姦するなど強姦3件,傷害1件の犯行に及んだ被告人に対し,懲役18年の刑が言い渡された事例