過剰なる記憶力が、患者や家族のもがき苦しむ姿を鮮明に保持していたために、心の病を得てしまった。以来、大切なのは日常の細部になったが、それでいい。いまはただゆるやかな坂を下る、その力の抜き方だけを会得したいのだ。医師だからこそ語れる、いま在ることの愛おしさ。心と身体にやさしいエッセイ集。