• Author水島治郎
  • Publisher岩波書店
  • ISBN9784000244664
  • Publish Date2012年7月

反転する福祉国家 / オランダモデルの光と影

一九八〇年代、ワークシェアリングを通じて経済危機を脱したとされるオランダは、近年は女性や高齢者、障害者、福祉給付受給者らの就労を促す雇用・福祉改革を進め、国際的な注目を浴びている。ワーク・ライフ・バランスやフレキシキュリティを促進するなどの先駆的な改革は、福祉国家再編や社会的「包摂」の成功例とされている。しかしオランダは同時に、反イスラム感情の高まりとともに「移民排除」と「移民統合(同化)」へと大きく舵を切り、移民・難民政策を転換した。その背後には、大衆的な支持を集める新右翼政党の躍進があった。社会的「包摂」を積極的に推進しているオランダが、移民・外国人の「排除」を進めているのはなぜなのか。一見すれば対極にみえる現象に通底する論理は何なのか。「モデル」(光)と「アンチ・モデル」(影)の交差するオランダ政治を考察し、現代社会の構造的変容を浮き彫りにする。

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