詩人、童話作家、教師、農業化学者、仏教者…、三十八歳の短い生涯ながら、宮沢賢治はさまざまな相貌ををとって、姿をあらわしてくる。しかし、修羅に生きねばならなかった賢治の一生は、伏せられたままで語られてきたのではないのか。本書は、知られざる真実と書かれざる謎を、一族肉親との愛と相貌、風土と社会のかかわりあいなどを通して、追及するとともに、賢治の生身の一人の人間としてとらえ、その愛と苦悩の生涯を、共感をもって描く力作である。