2014年1月、兵庫県内の大学教員が中心となって外国人にルーツをもつ「ニューカマー」の子どもたちの進路、特に高校進学等の実態・課題調査等の研究を行う今プロジェクト「兵庫の外国人の子どもの未来を拓く教育プロジェクト」が発足した。
兵庫県内で活動するボランティアの地域学習支援者は「ニューカマー」生徒に全日制高校進学者が少ないこと、他府県で実施されているような「特別入学枠」制度がないことに疑問を持ち、子どもたちが夢のある進路選択をできるように現行制度の改善を願っていた。この現状を知った「ニューカマー」の子どもに進路について関心を持っていた研究者が呼びかけで集まり今研究チームを結成した。
1980年代以降日本は外国人急増の時代となった。外国人が居住する地域が増え、自治体では「日本国籍者に限る」という制限を撤廃し福祉や住民サービスの改善日本語学習支援などを始めた。兵庫県では1995年以降「外国人県民」の位置づけを始めた。学校にも日本語を母語としない子どもが多く在籍するようになり兵庫県でも日本語学習支援をする「サポーター」等を学校に派遣するようになった。
しかし日本語を母語としない子どもにとっては日本の学校での勉強は難しく、高校入試は壁となり進学率の低さが指摘されてきた。日本語理解が不十分な生徒への「公平措置」としての「特別入学枠の導入」は海外帰国生徒に続いて、中国帰国者の子どもに適用された(1980年代後半より東京都から始まり各地に広がる)。この制度は今日では16以上の都府県で実施され、日系人や国際結婚等の「ニューカマー」生徒にも適用されている。兵庫県でも1990年代初めに地域学習支援団体や中学校は「特別入学枠」を要望していた。2002年には「外国人の子どもに関する教育将来構想検討委員会」が調査研究を行い「入試特別措置(特別入学枠)」設置等を提言している。また、この間兵庫県議会でも議員の質問・要望が行われ教職員組合や市民団体等も「特別入学枠」導入を要望している。しかし兵庫県では2000年のルビ付き等からの進展はない。
当プロジェクトは1月より毎月定例会をもち、関心を持つ分野の調査報告や外部講師を招いた学習会のほか、県内3地域で中間発表と意見交流の場として「中間報告会」を実施した。また、兵庫県自治学会研究発表会や兵庫県議会の超党派議員有志学習会、兵庫県在日外国人教育研究集会で報告の機会をいただいた。ほか兵庫県知事公室長や県教育次長にもプロジェクト趣旨説明を行う機会も持てた。
約一年にわたるこのような活動をまとめたものが本報告書である。冒頭には改善すべき高校入試制度内容を「提言」としてまとめた。
最後にデータ提供等の協力をいただいた関係府県教育委員会、兵庫県・県教育委員会、神戸市・姫路市教育委員会、外国人集住都市会議、奈良県外国人教育研究会、NPOおおさかこども多文化センター、地域学習支援団体等に感謝申し上げる。
なお、この研究は公益財団法人 日本教育公務員弘済会の研究助成事業として実施した。
2015年1月 プ