アップル、MS、アマゾンも……
グローバル企業で活用されるイギリス発祥のデザイン思考
独自ワークショップの威力とは
イノベーションを起こすための力をどのように鍛えていけばいいのか―。
本書では、今後我々が直面する超高齢社会などを見据えて、SDGs(持続可能な開発目標)時代における「イノベーション力」を
向上させるための方策、課題解決法について紹介します。
ベースとなるのは「インクルーシブデザイン」の方法論です。
英ケンブリッジ大学発の方法論で、筆者が経営するインクルーシブデザイン・ソリューションズでは、
それに米スタンフォード大学の「デザイン思考」を組み合わせて、日本流のワークショップ
「インクルーシブデザイン・ワークショップ」として国内で独自に展開しています。
ワークショップでは、商品やサービスを開発するプロセスを体験していきます。
その過程で、高齢者や体の一部が不自由な障害者といった「リードユーザ」を巻き込む(インクルードする)のが特徴です。
私たちはリードユーザを、障害を持ち日常生活に不便を感じながらも、その解消のために創意工夫をしている人たちと定義しています。
健常者だけではない、制約条件を持った人の視点を取り込むことで、機能的で先進的な商品やサービスを実現することも可能になります。
実はこうしたリードユーザが自分の障害について話せば話すほど、聞き手には未来の超高齢社会の姿などが見えてきます。
私たちが高齢者となって将来遭遇し得る障害はどのようなものなのか、いわば、未来に起こり得る社会課題がリアルに理解できるのです。
そうした、トレンドを一歩も二歩もリードしているという意味で、リードユーザと呼んでいるわけです。
またリードユーザには、不便を楽しむという概念もあります。
少々不便でも、それをどうやって楽しむのか。そうしたことは、これから環境制約や身体制約がどんどん進んでいく社会の中では素晴らしいお手本になります。
ビジネスをしていく企業にとっても非常に参考になるのです。
私たちが開発したワークショップの手法には様々な工夫が凝らしてあり、段階を追って体験していくことで、参加者は未来の社会的課題を見据え、
問題定義の糸口がつかめるようになっています。
本書では、これから求められる未来思考型リーダーの人材像をベースに、SDGs 時代の課題解決を進めるためのインクルーシブデザインの方法論、
具体的なワークショップの手法などについて解説します。
このようなイノベーション力の向上と併せて、SDGs時代における企業組織の持続的な発展、
また超高齢社会とどのように共生すべきか、その可能性についても探っていきます。