隠の精神とは何か。飛び立つ鴫、蘆の枯葉、その中に万有の寂寥と人生の無常を感じ、それを深い美へと昇華させた中世草庵の人々。閑寂な生活、人間の性の直視、漂泊の旅と絶対の孤独。長明・兼好・西行の隠の三つの様式を分析し、俳諧・石庭・利休の茶など、日本文化の底流を貫く「わび」「さび」の精神のルーツと本質を明らかにする。