愛しながらも結婚にふみきれぬ憂鬱質の青年詩人。彼を見守る冷静な一人の心理観察者。『反復』は、さながら一篇の恋愛心理小説のごとく書かれている。だがここには、前に向かって人生を生きよ、と説くキルケゴールの厳粛なキリスト教的人生観が織りこまれていて、それが彼自身の不幸な恋愛体験に即して展開されているのである。