戦争へと急傾斜してゆく昭和前期、20年間の日本-荷風の視線はひくく市井を這い、時に上空を見上げ、驚くべき適確さで世界の不穏な風を読む。『断腸亭日乗』を主要テキストに、時代風景のなかに文豪の日常をくっきりと描写し、世俗の事件と歴史の命運とをあわせ読む「歴史探偵の手法」を確立した会心の著作。