• Author溝上雄文

渋谷おでんや物語

「桐生さん、次の本を出したいんだ」 「………………?」 「末期ガンで、死後の献体の手続きも、今、済ませたところなんだ。もう長くないから、 僕が死んでから本にしてほしいって思ってネ。原稿のフロッピーを送ったから後は頼む よ。」 「洒落たことしますネ。じゃあ、見舞いがてら一度打ち合わせに行きますよ」と、明る く答えたものの、そういう僕を制して 「全部、そちらでやってほしい。みんな任せたいんだ。僕はもう限界だよ。引き受けて くれよ……」と、さっさと言うことだけ言って電話を切ってしまわれた。

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