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  • 著者村上陽一郎
  • 出版社文藝春秋
  • ISBN9784166612529
  • 発行2020年2月

死ねない時代の哲学

いま私たちは「なかなか死ねない時代」に生きている。



人類の歴史の中で、ひとり一人が死生観を持つことはなかった。

病気やけがによる不慮の死が身近だった時代、どのように死ぬのかを考えるのではなく、どう生きるかこそが問われていたのだ。



しかし医療が進歩し、人生の終わりが引き延ばされるようになったことで、逆に、私たちは自分の死について具体的に考えなければいけなくなっている。

自分の人生をどう終わらせるのか--歴史上はじめて、私たちはこうした問いに答えなければならなくなったのだ。



著者は、まず、私たちが、なぜ死ねなくなったのかを教えてくれる。

近代医学の歴史が実は浅いこと。医療の進歩が医者と患者の関係を変えたこと。そして「健康」のあり方が変わってきたこと。



その上で、私たちの「死生観」の移り変わりを追う。

中世、江戸時代、そして日本と西洋で、死はどう考えられてきたのか。それが、どのように変わってきたのか。に対する考え方はどう変わったのか。



そして安楽死・尊厳死について考える。

オランダなどで安楽死が認められるまでに、いくつもの事件があり、社会的な議論があった。日本でも数十年にわたって議論が続いている。

そうした経緯を踏まえ、残された人、医療関係者の思いにも目配りしつつ、私たちは死を自己決定することができるのか、考えを深める。



最後に、死を準備するときの心構えについて述べている。

死を思えるのは人間だけ。死を選べる社会となったいま、私たちはどのようにして死を考えたらいいのか。心の道しるべを示してくれる。



これまで医療や死について長年、思索を深めてきた著者が、読者と一緒に、人生の終わり方について考えるとき、わきまえておくべきことを、丁寧に伝える一冊。

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