業界大手のパシフィック電器は、人事部労務担当部長の江間を中心に大規模なリストラを進めていた。実務を担う大岡の担当リストラ対象社員が、ある日首吊り自殺をしてしまう。大岡は心身ともに疲弊しきって、三国が代表を務めるNPOで「プロボノ」として社会貢献活動をすることに救いを求める。ひょんなことから三国に江間の社内での悪辣な行状を打ち明けたところ、義憤にかられた三国は、江間を「嵌める」べくハニートラップを仕掛けた。その結果、写真週刊誌へのスキャンダルの掲載に成功して、江間の社内での評価はガタ落ち。しかしこれは、三国が仕掛けた罠の序章にすぎなかった……。
「ぷろぼの」とは、「公共の利益のために(pro bono publico プロボノ プーブリコ)」という意味のラテン語。大企業のえげつないリストラと、それに立ち向かうNPOのボランティアたちを、軽妙かつコミカルに活写する。
「胸のすく話を書きたいなと思ったのが、構想の最初にありました。……先が見えないサラリーマン社会の現状においては、自分の存在意義や生きがいを社外に求める人たち、プロボノと呼ばれる、職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献し、人から感謝されることで喜びや生きがいを得るという人が増えてきました。じゃあ、そのプロボノというのは、労働としての貢献だけに通用するものなのか。いや、世の中において一見役に立たないと思われている技能や能力が、人の恨みを晴らすことに応用できたら、物語として面白いのではないかと思ったんです」(著者インタビューより)